つかこうへいさん (撮影/遠崎智宏)
つかこうへいさん (撮影/遠崎智宏)
林真理子さん (撮影/写真部・片山菜緒子)
林真理子さん (撮影/写真部・片山菜緒子)

 今年、連載開始から25周年を迎える作家・林真理子さんの連載「マリコのゲストコレクション」。毎号、豪華なゲストにご登場いただきました。今回は、コロナの不安を吹き飛ばす「元気が出る言葉」をセレクト。1997年4月11日号から劇作家で演出家、つかこうへいさんです。

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 今年、没後10年を迎える、つかこうへいさん。70年代から80年代にかけて小劇場ブームを起こし、演劇界に一大旋風を巻き起こしました。毒のあるユーモアが売りだったつかさん、対談の最初は「です」「ます」と丁寧なしゃべり口だったのが、話が乗ってくるや口調が豹変。マリコさんを「おめえ」呼ばわりし、説教し倒す「つか節」が戻ってきて──。

林:小説一本に絞ったら、いまより安らかな日々を送れて、経済的にもラクでしょうけど、それでも劇団とか若い人たちを見捨てないで続けてるって何ですか。やっぱりお芝居の魅力?

つか:それと、一生懸命やってる人たちとか、自分を変えたい人たちの手伝いをしたいんじゃないですか。俵万智さんにしても、「短歌だけじゃなく、別の世界をやってみたい」みたいなことを言ってましたしね。

林:それだけ聞くと、つかさんて、ほんとにいい人だなと思いますけど、万智ちゃんの話によると、つかさん、劇団の男の子たちに、「おまえら、だれか万智を落とせ。落としたら賞金出すぞ」と言ったんでしょ?(笑)

(中略)

林:でも、よかった。つかさん、最近すっかりいい人になったのかなと思ってたんですけど、相変わらず性格悪いですね。だんだん口調が元に戻ってきましたね。

つか:性格、悪いよ。変わらないよ、そういうのは。こういう仕事してるから、どこか性根がひん曲がってますよね。うちの母親なんて「おまえと暮らすのだけはいやだ」って。

林:うちの夫は、自分の妻は世間から誤解されてる、ほんとはやさしくていい人だ、と思ってるわけ。そういうふうに見てくれる家族ってありがたいですよね。

つか:それは旦那がそう思ってるんじゃなくて、おめえがそう思ってほしいという願望だろうが。俺は性格の悪い女と結婚したけど、こいつカネ稼ぐから、と思ってるって(笑)。

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