だが今、速報はほぼ来ない。学校も4月半ばからはビデオ会議ツールの「Zoom」によるオンライン授業が始まり、5月半ばからは通常の教室での授業に戻る予定だ。マスクも薬局や雑貨店で数多く売られており、地下鉄の駅でもソウル市が消毒用アルコールとマスクのセットを歩行者に配っている。

 そんな韓国から日本の状況を見ていると、国内での感染者を最初に確認したのはほぼ同時期(韓国では1月20日、日本では1月16日)である両国の現在地がなぜこれほどまでに異なっているのか、疑問に感じることが多い。

 先日、私が住むワンルームマンションの大家さんからランチのお誘いを受けた。自家製のキムチとトック(の入ったスープ)をごちそうになりながら、つたない韓国語で「コロナで延期されていた学校がやっと始まったので良かった」と報告すると、「良かったね。ところで、日本はどうなっているの? 検査もしてないんでしょ? 家族や友達は大丈夫なの?アベは何をしているの?」と、矢継ぎ早に聞かれた。私にもわからない。「チャルモラヨ……(よくわからない)」としか答えようがなかった。

 韓国でも安倍政権の対応がテレビの報道番組などで取り上げられることがあるが、布マスクが全世帯に2枚ずつ配られることになった「アベノマスク」政策が不評であることを紹介するものなど、政権の機能不全ぶりを伝えるものだ。

 4月15日に投開票された国会議員選挙で、文在寅大統領率いる与党「共に民主党(以下、民主党)」が圧勝した。革新系である民主党が国会で過半数以上の議席を獲得するのは盧武鉉政権時代以来16年ぶり。ひとつの政党が国会の5分の3を超える議席を占めるのは1987年の民主化以来、初めてという歴史的勝利だった。もちろん、背景には文政権の新型コロナウイルスへの迅速な対応があると多くのメディアが分析している。

 私も韓国籍を持つ友人と一緒に期日前投票所に行ってきた。4月に入ってから、街のあちこちで行列を見ることがあり、「社会的距離の確保」が求められているのに、いったい何に並んでいるんだろう?と疑問に思っていたのだが、この日それがわかった。投票を待つ人たちだったのだ。

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選挙で感じた日韓の圧倒的な「違い」