4月30日夜のソウル市内の飲食店の様子(林羊子撮影)
4月30日夜のソウル市内の飲食店の様子(林羊子撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が延長されることになり、一向に事態収束への「出口」が見えない日本。これとは対照的なのが、新規の感染者数が顕著に減少し、ウイルスの”制圧“に成功しつつある隣国・韓国だ。首都ソウルに留学中のライターが、現地の実情をリポートする。

 韓国国内の新規感染者数は、4月後半のこの2週間、10人前後が続いている。2月下旬のピーク時には1日の新規感染者数が1千人を超えていたが、次第に減少し、中央防疫本部の発表によると、4月30日には市中での感染者が2月中旬以降で初めてゼロ人にまで減少。緊急事態宣言がいつまで延長されるのか、現時点ではまったく見通しが立たない日本とは対照的だ。

 私は3月上旬、留学のために韓国に入国したが、その時に比べると、街は日常を取り戻しているように見える。

 ソウル市内を歩いていると、地下鉄やバスなどでの移動する人々はみなマスクを着けているし、百貨店や屋内施設の入り口では検温と手のアルコール消毒を求めるところが多い。だが、カフェや飲食店に入れば、マスクをつけている人はほとんどおらず、みんな至近距離で楽しそうに話している。「プルクム(火金=火のようにお酒を飲む金曜日という意味らしい)」ともなれば、人気のコプチャン店やダッカルビ店は、狭いテーブルで焼酎を酌み交わし、酔っ払う若者やオジサンたちでいっぱいだ。

 私が渡韓した当初はそうではなかった。私も3月上旬に始まる予定だった授業の開講が延期され、入会したスポーツジムも政府の要請により休業。マスクも政府が生まれた年の末尾の数字で購入できる日を振り分けていたため、薬局には行列ができていた。また、居住区内で感染者が出るたびに、区役所からスマートフォンに速報が届くため、1日に何度も鳴る地震速報のようなけたたましい着信音にビクビクしていた。

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「アベノマスク」への韓国人の視線は