大学関係者からはOBの小泉進次郎環境相の効果も指摘されている。昨年、フリーアナウンサーの滝川クリステルさんとの結婚や、初入閣で話題に。出身大学も、地元の神奈川県を中心に注目を集めたようだ。

 反対に大きく減少したのは駒澤大で、前年比69%だった。昨年、のべ志願者数が前年比9%増えた一方で、合格者を17%も絞った。難化した結果、安全志向の受験生に極端に嫌われた形だ。

 神戸市や周辺の大学も減少が目立つ。関西学院大が前年比88%、神戸学院大が同82%だ。駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は理由について、「神戸の地盤沈下」と指摘する。

 神戸市は人口減少が続く。政令指定都市の間では人口で長らく5位だったが、15年に福岡市、19年に川崎市に抜かれ、7位に。加えて受験生の地元志向も強まり、大阪や京都などからの志願者集めが難しくなっている。

「神戸はかつて新興住宅地があり、若い世代も多かったのですが、今は高齢化しています。11年前に阪神電鉄と近鉄で直通運転が始まって交通の便が良くなったことで、勢いのある大阪の大学に志願者を取られています。街レベルでの対策も必要でしょう」(石原部長)

 近年、実志願者数を伸ばしている大学はどこか。17年の数字と比較してみた。

 増加数で見ると、千葉工業大が約3800人増やした。同大には、全17学科を併願しても1学科分の受験料(一般入試の場合3万円)しかかからない併願制度がある。それが多くの実志願者数を集めた理由とみられる。また、試験日前日まで出願を受け付ける体制を整え、安全志向の受験生の受け皿になっている。

 それだけではない。入学後の学習支援が手厚く、学生サポートセンターでは数学や物理などの基礎学力を専門講師が個別指導している。また、キャンパスの校舎を刷新し、最新の設備を整えた。同大の広報担当者は「学生の満足度も向上し、高校教諭からの評判も良くなっている」と話す。

 増加率で見ると、桜美林大が17年比で157%と最も高く、武蔵野大が143%、東京都市大が131%で続いた。いずれの大学も学部やキャンパスを新設したり、キャリア支援を手厚くしたりするなど改革に取り組んでおり、評判を上げている。

 一方、実志願者数を大きく減らした大学を見ると、早慶や同志社大、明治大、東洋大などの人気大学がずらりと並ぶ。受験生の安全志向から軒並み大きく減らした格好だ。今後いかに実志願者数を増やすかが問われそうだ。

 今年は新型コロナウイルスの影響で、オープンキャンパスや説明会が開催できないなど、志願者集めが難しくなると見られる。これまで以上に大学の実力が問われる状況になっている。(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)

週刊朝日  2020年5月8日-15日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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