林:私、ぜんぜんその記憶がないんですよ……。誰が断ったんだろう。

内田:コノヤローと思って(笑)、しょうがないから林さんの代わりに渡辺えりですよ。(中略)そのあと、この映画どうなったと思いますか。なんと、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で特別上映された。

林:ほんとに? それはすごいです。

内田:マジですごいでしょう。ハイタッチお願いします。

林:はい(パチンとハイタッチ)。

内田:ちょっと話が戻るけど、1973年にダコタハウスでオノ・ヨーコさんに会ったとき、「あなたはお酒飲んで酔っ払って暴力ふるったりセックスしたり、そんなことばっかりやってて、結局何もしてないじゃない」なんて言いやがったの。そこまでは「冗談じゃねぇよ」なんて言いながら聞いてたんだけど、「と、ジョンも言ってたわよ」って言われて、それでキレたんだよ。クソーッと思って、ドアをバーンと蹴飛ばして、「見てろコノヤロー。ファック・ユー!」とか言って出ていった。

林:すごい光景ですね。歴史的な大ゲンカ。

内田:オノ・ヨーコ相手にケンカしたやつ、いねえっていうからね。でも、俺は自分が正しいと思ったら、誰とでもやりますよ。それでそのあと「コミック雑誌なんかいらない!」がニューヨーク・タイムズに3回出て、オノ・ヨーコは近代美術館にこっそり見に行ったらしい。こんなうれしいことなかったですよ。

林:絶対再上映ですよ、これは。この話を聞いたら、誰だって見たいと思いますよ。

内田:ありがとうございます。うれしいなあ。俺、ほんと腹立つんだ。スキャンダルとかそんなことばっかり言われるけど、俺は実は人を見つけて育ててスターにして、自分で資金集めて脚本書いて映画つくって、ニューヨーク近代美術館で特別上映だとか、やってるんだよ。林さんにも、出てほしかったなぁ。

週刊朝日  2020年5月8‐15日合併号