耐震の専門家が国道にのめり込んだきっかけかけは13年から始めた「どぼくカフェ」だ。土木に注目が集まるのは、災害や事故など悪い話題に関してのことが多い。そこで、土木マニアを招き、普段から感じられる土木の魅力を一般の人に話してもらう機会を作った。

「道マニアの方は研究者とは違う視点で楽しんでいたんです。道は当たり前にあるから、関心が持たれない。だけど標識の字体が違っていたり、色々な特徴がある。そこには意味がある。それを考えると殺風景だった道路が途端に意味を帯びてくる。ここからどんどんハマっていきました」

 ちなみに、国道の標識はその形から「おにぎり」と呼ばれているという。

「焼きおにぎりができることがあります。国道だった道が県道になるなど道は変わります。そのとき、国道の標識が撤去できないこともある。そうすると放置されて、錆びるんですね」
 
単なる余談か思ったら、本当に言いたいことはここからだった。

「役所はこれを嫌がりますが、僕は焼きおにぎりの話をもっと大事にしてほしいと思っている。アメリカではルート66とか歴史的な国道が大切にされている。日本も国土を形作ってきた道路にもっと関心をもたないといけないと思います」

(本誌・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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