そこで今回は春の食卓を飾るに相応(ふさわ)しい特別メニューを選りすぐってもらった。

 まず、銀座はち巻岡田である。大正5年開店以来、多くの文豪に愛され続けたこの店は、酒肴セット。「酒飲みコンシャスな肴が美しくぎっしり詰め込まれたつまみの宝石箱」だそう。穴子の炊き込みご飯も持ち帰れるとは映画監督・河毛俊作氏情報。業界人、芸能人が集う白金の酒肆ガランスはキューバンサンドウィッチで勝負。ハム、ローストポーク、チーズ、ピクルス入りのサンドウィッチの表面にはバターが塗られ、プレスして焼いてあり、表面が乾くことはなく温め直しても美味しい。表参道テストキッチンエイチは伝説の山田宏巳シェフの「香住のカニをどっさり入れた海鮮ラザニア」。これは何と白い陶磁器に入っている(この状況下どの店も変更が生じる場合もあるので事前に問い合わせを)。

 あのユーミンがTwitterに「一度は、体験して欲しい!!」とアップしていたのがキャンティ。季節の前菜3品/スパゲッティバジリコ/スパゲッティポモドーロ/仔牛のカツレツミラノ風のコースは垂涎もののテイクアウトである。

 芝居や花見で、弁当は日本の伝統文化。頑張っている店を見ると応援したくなる。郊外なら梅ケ丘の広東料理瑞雪、武蔵小金井のSOBA Masumi、京都なら、食たくかとう。「食は文化」。その灯をテイクアウトで守りましょう。

週刊朝日  2020年5月8‐15日号

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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