前出の裵氏が解説する。

「米軍は、北朝鮮の潜水艦の動向やミサイル基地の活動を探知するなど、わざわざ南北間の緊張を高めるような演出をしたのです。なぜこんな行動を取るのかと言うと、実はいま在韓米軍の駐留経費を巡る協議で、米国側は負担額の大幅増を求めているのですが、韓国側は拒んでいるからです。米国は正恩氏の『重体』説に乗じて、韓国を圧迫する手段に出たのです」

 米国は当初、韓国政府に19年の負担額(約905億円)の5倍以上の約50億ドル(約5400億円)の支払いを要求していた。韓国側は19年の負担額の13%増を提案したが、20日にトランプ大統領が拒否した。

「米軍はグアムに戦略爆撃機B-52を6カ月周期で循環配備し、それが韓日の防衛にも寄与しているという名目でした。ところが、15日ころに米本土に撤収させています。韓国が金を出さないのだから、撤収して経費削減するほうが得策だというわけです。米国は自国の防衛費を削減する一方、韓国と日本に防衛費の負担増を要求しています。この時期を利用して、同時にプレッシャーをかけているのです」(裵氏)

 正恩氏の「重体」説を巡って、米朝韓のさまざまな思惑が交錯している。日本も駐留米軍経費の協議で、米国から現在の4倍の約80億ドル(約8700億円)もふっかけられている身。こちらも対岸の火事では済みそうにない。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日5月8-15日号に加筆