「安倍政権の矛盾、『7年間にも及ぶ国と社会に対するテロ』は、この危機を通じてますます明らかになった」

「安倍首相は国会質疑でも、記者会見でも、問いに誠実に回答するということをこれまでしないで来ました。平気で嘘をつき、話をごまかし、平気で食言してきた。一言をこれほど軽んじた政治家を私はこれまで見たことがありません。国難的な状況では決して舵取りを委ねてはならない政治家に私たちは舵取りを委ねてしまった」

 また、別の月刊誌では「アホ丸出し『安倍VS小池』」というタイトルで、両氏をコテンパンに叩いている。

 私は、これらの安倍首相叩きはいずれも当たっていると捉えている。森友・加計疑惑から、桜を見る会など、いくつもの大問題がある。

 だが、はっきり言って、現在の日本の読者たちはこうした安倍首相叩きにあまり関心を示さない、というよりも示す余裕がないのではないか。

 4月23日現在、新型コロナの国内の感染者は1万2千人、死者は300人を超え、日に日に確実に拡大し続けている。政府の緊急事態宣言は5月6日までだが、新型コロナの感染拡大が収まるはずはない。国民は、というより世界中の人たちが恐怖の中で、どうすれば身を守れるのか、と全身全霊で闘っている。そうした人々にとって、もちろん私も含めてだが、今現在の安倍首相叩きの氾濫は、いささか無神経に思えるのではないだろうか。

週刊朝日  2020年5月8-15日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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