こうした孤独死を防ごうと、約3千戸の都営戸山ハイツ(東京都新宿区)では自主的に声をかけ合う住人もいる。1949年に入居が始まり、超高齢化が進む「限界団地」だ。78歳の男性は言う。

「団地では、夫婦のどちらかが先に亡くなった人が多い。絶えず友人と連絡を取り合い、ラジオ体操にも毎朝参加して、お互いに安否を確認し合っているよ」

 その一方で、住人同士の交流は薄れつつあるという。

「新規入居者の個人情報は、民生委員しか知らない時代。防災訓練のときに初めて、何号室に人が住んでいて、高齢で体が不自由だから参加できないということを知らされる。どうやら存在すら知られたくないという人もいるみたいだね。ある程度自分たちから自治会の交流会とかに参加してもらわないと、こっちも関われないでしょ」(前出の78歳男性)

 最近の入居者だけではない。戸山ハイツを管理する都住宅供給公社によると、昨夏に亡くなった一人暮らしの80代女性は、団地に約50年間住んでいたにもかかわらず、発見されるまで約1カ月かかった。

 同公社は、高齢者や障害のある人を対象に、希望者への巡回や安否確認の要請に対応している。だが、担当者はこう漏らす。

「巡回の希望を聞き取り調査するのですが、本当に孤独で人知れず亡くなっていった人は、最初の段階から接触すら難しい。強引に入っていくわけにもいかないので、われわれとしても、どう関わっていくかが課題になっています」

 完成時に「東洋最大」と言われ、62年に入居が始まった草加松原団地(現・コンフォール松原、埼玉県草加市)でも、同様の問題を抱える。現在はUR都市機構が管理する同団地の研究を続けている獨協大学の岡村圭子教授(社会学)は、原因についてこう分析する。

「高度経済成長期、突貫工事で団地が次々に建てられ、インフラが不十分で断水・停電などの問題が多発し、近隣との連携が不可欠な状況でした。牛乳や灯油を自治会で一括購入したほうが安く手に入るといったメリットもありました。しかし、今は自治会に入らなくても一人で快適に生活できます。子どもがいれば、子ども同士のつながりで交流が生まれますが、子どもすら減っていますから」

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