近年、東大合格者数を伸ばしている西大和学園(奈良)でも、世界ランク16位のコロンビア大(米国)や23位の清華大(中国)など東大よりランクが高い海外大に合格者が輩出している。

 同校では世界を舞台に最前線で働く社会人を招いたセミナーや、オックスフォード大やケンブリッジ大(ともに英国)の学生を招いて英語で議論するプログラムを行うなど、“本物”に触れる機会を用意している。中岡義久校長は言う。

「グローバルな視点で将来を思い描くことで、『早く世界に出たい』という生徒が海外大を目指すようになっている。大学院は海外へという生徒もかなり多くなってきました」

 これまで成績優秀層の間で人気を集めてきた大学医学部。各高校の合格実績を調べると、ハンガリーやチェコの医学部を目指す動きがあることがわかった。

 ハンガリー国立大医学部への進学を支援するハンガリー医科大事務局(東京)の石倉秀哉専務理事は「志願者は増加傾向にある」と話す。同局を通じて出願したのは06年に35人(実数)だったのが、19年には322人(同)と約9倍に増加。最近はチェコへの出願も増えたという。

 理由の一つが、日本の医学部の難化だ。医師は手堅く高収入を狙える職業として人気が過熱。国公立大医学部は「東大に入るよりも難しい」と言われるほどで、多浪生も多くなっている。

 学費の高さもある。日本の私大医学部の学費は安くても6年間で約2千万円。3千万円を超える大学も普通だ。さらに多額の寄付金を払うこともあるとされる。

 昨年、ハンガリーの医学部の倍率は2.7倍で、日本の国公立4.4倍、私大15.0倍(河合塾調べ)ほどではない。6年間の学費も1100万~1200万円程度で、生活費を含めても1700万~2千万円程度だ。授業は全て英語。予備コースで1年間英語力をつけ、本コースに移る。

 欧州連合(EU)共通の医師免許を取って卒業するが、日本の学生のほとんどは帰国して医師国家試験を受ける。東大や京大、大阪大の附属病院など、日本のトップの病院で働く卒業生は少なくない。石倉専務理事はこうみる。

「英語で進級しなければならないということで、日本で学ぶよりも2倍くらい勉強しなければならない。実力をつけて帰ってくる。卒業生の評価も高い。ハンガリーにもチェコにも女子差別や多浪差別はないので、積極的に検討するべきです」

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