林:でも、収入とか栄光は……。

伯山:それは僕のほうが今のところあるんですけど(笑)。「良い生き様だな」という嫉妬に近いものを感じましたね。

林:志村けんさんもコロナウイルスでお亡くなりになり、お芝居も歌舞伎もみんな中止になっちゃって、ここまで暗い時代って、私はちょっと経験したことがないですよ。

伯山:僕、志村さんにそこまでの思い入れはないと思ってたんですが、意外と落ち込んでて、ちょっとまずいなという……。たぶん全国民が今そういう気持ちじゃないですかね。

林:そうだと思います。インパクトすごいです。

伯山:戦争のときですらライブができてたんですよ。講談もやってたんです。お上の目を盗んで「きょうはちょっと色っぽい世話物でも」って言うとワーッと拍手が来た。それが今やれなくなっている。これが元に戻るのにどれぐらい時間がかかるのかと思いますね。

林:ほんとですよね。

伯山:僕はこの騒動で、「人生ちょっと見直そう」みたいな感じになりました。僕、去年700席ぐらいやって、一日も休みがなかったんです。

林:まあ、700席も。

伯山:カミさんにも子どもにも迷惑をかけましたけど、真打ち昇進の披露目も中止になったり、今回10日ぐらいポーンと一気に仕事が飛んでなくなったときに、こんな世相の中、世間に対してどういうアプローチで発信していけばいいのか、「伯山」という名前ももらったし、どうすればいいのかなって考える契機になりましたね。

林:私はものを書く仕事ですけど、講演会を今年になってから一度もやってないんです。いま思うと、やっぱりキャッシュはありがたかったなと思って。

伯山:アハハハ。でも、林さんぐらいいろんな作品を生み出されたら、もう困らないんじゃないですか。

林:原稿料と印税で何とか食べていけますけど、私、生活がちょっとお派手で(笑)。銀座の文壇バー、誰も来ないと聞くと何人か連れていったり、そういうことはキャッシュでいただくありがたいお金を回してたんですが、それがいただけないし、印税が入ってくるのは1カ月半後だし、ほんとに大変なんです(笑)。伯山さんはテレビにもお出になってるから、お金のほうは大丈夫ですよね。

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