マスクの供給を望む声は、回答にも多く寄せられた。

「マスク、アルコール、手袋最優先で配布してほしい。医療機関が最前線です。ここに弱点があってはこの闘いに勝てません」(都道府県不明・70代・一般内科)、「診療所にこそN95マスクが必要。発熱患者を診ない町医者が増えている」(京都・50代・一般内科)

 不足しているのは、マスクだけではない。

 アルコール消毒液について、先のC医師は医師会から、「手に入るかもしれないので、そのときのためにペットボトルの空きを用意してほしい」と言われている。回答にも、「アルコール不足。マスクは不足しても仕事は可能だが、アルコールが不足すると仕事ができない」(大阪・50代・循環器内科)といった声があった。医療現場の物資不足の深刻さは予想以上だ。

 アンケートでは医師が自ら実践している感染予防策についても聞いてみた。

 まず、基本である手洗い、アルコール消毒、マスク、うがいの四つについて聞いた。やはり断トツで多かったのは手洗いで、マスク、アルコール消毒、うがいが続いた。

 仕事場が医療現場であることを反映してだろう。帰宅後のシャワーという回答が目立った。「帰宅後すぐにシャワーを浴びている」(愛知・30代・産婦人科)、「帰宅したら外で衣類をはらい、すぐにシャワー」(大阪・50代・一般内科)。シャワーを浴びることができないときは、「顔を洗う」(奈良・30代・小児科)のが良いようだ。

 もう一つ気になった対策は、モノに触らないこと。新型コロナの主な感染経路は、何かに触った際にウイルスが手に付着し、その手で口や目、鼻を触って起こる接触感染だ。したがって、なるべくモノに触れないという意識が高い。

「ドアノブ、エレベーターのボタン、手すりなどをなるべく指先で直接触れない」(東京・50代・血液内科)、「電車のつり革などを素手で触らない」(東京・40代・皮膚科)、「指を口や鼻、目にもっていかない」(兵庫・50代・腎臓内科)などだ。

 間接的にウイルス感染を防ぐためには、免疫力を上げることも重要。睡眠、バランスの良い食事、適度な運動を心がけている医師が多かった。(本誌・山内リカ、吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年5月1日号より抜粋

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら