入院患者や医師、看護師らが感染した中野江古田病院 (c)朝日新聞社
入院患者や医師、看護師らが感染した中野江古田病院 (c)朝日新聞社
(週刊朝日2020年5月1日号より)
(週刊朝日2020年5月1日号より)
(週刊朝日2020年5月1日号より)
(週刊朝日2020年5月1日号より)

「非常に感染リスクが高い職場にもかかわらず、ここには防護服も、N95と呼ばれる専用マスクもなく、普通のサージカルマスクだけで診ています」

【医師1200人に緊急調査】医療現場で起きている危機、予防策、アドバイスなど…アンケート結果はこちら

 こう逼迫(ひっぱく)した状況を打ち明けるのは、名古屋市内でクリニックを開業する呼吸器内科のA医師(40代)。

「熱がある患者さんは今、どこの医療機関でも受診を拒否される。まさに難民状態です。そういう人たちがわらをもつかむような気持ちで来られるのが、医師会が行っている当番制の診療所です」

 新型コロナウイルス感染症のリスクは十分に承知しているが、定期的に回ってくる当番の仕事はいくら感染リスクが高くても断ることはできない。

「マスクの着用だけなんてあり得ない。武器がないまま戦場の最前線に送られた兵士の気分です」(A医師)

 都内でクリニックに勤務する循環器内科のB医師(60代)は、受診者の激減ぶりに驚く。例年と比べ、2月は2~3割減、4月に入ってからは半分ほど減っている。一方で、発熱があったり、激しいせきがあったりする患者が、たびたび受診してくる。

「多くは、帰国者・接触者相談センターに連絡してもPCR検査を受けられる条件に満たない方たち。診療拒否はできないので、コロナ感染を否定できないまま治療をしています。いつもより慎重に診察していますが、いつ自分が感染するかと思うと、本当に恐怖です」(B医師)

 各国と同様、新型コロナ感染症の拡大が深刻さを増している日本。医師は日々、どんなことを考え、この感染症と向き合っているのだろうか。

 本誌は、医師専用のコミュニティーサイトを運営するメドピア社の協力で、医師に緊急アンケートを実施。2日間で1200人を超える医師から回答が集まった。一部、個別取材もしている。ここで紹介する回答、意見は「感染症に詳しい医師」のものだけではないが、医療現場の切迫した状況が伝わってくる。

 まず聞いたのは、実際に新型コロナ感染症患者の対応にあたったか。4月3日時点で「はい」と答えた医師は、回答者の11%にあたる147人。家族や職場内で感染者が出ていると答えたのは、150人だった。

 感染者に対して、どんな対応をとったかについては、「感染対策(N95、ガウン、手袋、ゴーグルの着用など)をして対応」「指定病院に搬送」「保健所に連絡」などが多く、外来が一時的に閉鎖されたり、関わった医療スタッフが自宅待機となったりしたところもあった。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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