「パンドラの箱」を開いてしまった? (c)朝日新聞社
「パンドラの箱」を開いてしまった? (c)朝日新聞社

 4月13日に放送された人気バラエティー「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)の2時間スペシャルで、MCの村上信五とマツコ・デラックスの、「音声」での出演というスタイルが話題を集めた。番組収録に携わるカメラマンやメイク、スタイリストなどのスタッフの人数を最小限にするという意味だとされた。

 番組は世の中の気になる事柄を調べたVTRに2人がコメントしていくのが基本的な構成。音声のみとはいえ、番組はおもしろく「成立」して見えた。これについて「大げさに言えば、パンドラの箱を開けてしまったのかもしれません」と指摘するのはメディア文化評論家の碓井広義さんだ。

「視聴者が番組の流れをわかっているという前提はありましたが、メイン出演者の姿がなくても番組ができてしまったことで、何十年かけて築き上げてきたテレビのスタイルが全て変わってしまうかもしれません」

 今後、テレビ番組が「もうコロナ以前には戻れないのでは」と、ある放送作家は言う。

「今まではスタジオにたくさん出演者がいてワイワイすることで楽しいものができると思われてきましたが、コロナ終息後、大勢がひな壇に座るシーンなどは『密』を感じて安心して楽しめない状態になってしまうのでは。出演者を減らすことで経費を省くことができますし、無駄を削ぎ落とし切った『夜ふかし』のスペシャル、あれは一つの究極の番組スタイルなのかもしれません」(放送作家)

 4月スタート予定の新ドラマも、無事放送できているのはわずかで、「野ブタ。をプロデュース」(日テレ系)や「下町ロケット」(TBS系)など、過去のヒットドラマの再放送や特別編などでしのいでいる状況だ。一方、現時点では、従来どおりの活動ができなくなったタレントやアーティストが動画サイトやSNS上で発信する機会がどんどん増えてきている。碓井さんは言う。

「テレビ局が機能不全になりかけている今も、ネットでは情報の発信を続けられている。いよいよメディアの優先順位が変わるかもしれません。これまではテレビ放送ありきで、『ネットでも配信』となっていたのが、ネットありきで、『電波でも流れます』となる可能性も十分ありますね(笑)。その先に、テレビがどんな形でおもしろい番組づくりを見いだしてくれるか、そこは気になります」

(本誌・太田サトル)

週刊朝日  2020年5月1日号