写真はイメージです(Getty Images)
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 新型コロナウイルス感染症では、“サイレントキャリア”と呼ばれる無症候性感染者が、一定の割合でいることがわかっている。

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 2月下旬、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では乗客3711人にPCR検査を実施。712人が陽性となったが、そのうち半数にあたる331人が無症候性感染者だった。中国CDCの武漢の患者約7万2000人を調べた研究でも、対象者の1.2%が無症候性であることがわかった。

 こうしたデータを踏まえると、「もしかしたら自分は無症候性感染者だったかもしれない」などと考える人もいるのではないだろうか。

 このギモンに答えることができる検査が、いま注目されている「抗体検査」というものだ。実際、ドイツやイギリスではこの抗体検査を広く実施することで「過去に感染して治った人(=抗体がある人)」を明らかにし、その人たちに「免疫証明書」を発行。行動制限を緩めることが検討されている。

 医療ガバナンス研究所の上昌弘理事長は、「抗体検査で陽性だと分かれば、以前にかかって、治ったという経過が分かる。抗体があるとその人は感染しにくいので、とても強い立場になる」とし、医療スタッフに抗体検査を実施し、抗体がある医師が前線に立つというという体制を提案する。

 ところで、抗体とはどのようなものなのだろうか。

 私たちの体には異物を排除する免疫システムが備わっている。体内に侵入してきた病原体は免疫細胞などによって認識されるが、このときにできるのが、その病原体に対して中和作用を持つ抗体だ。その後、病原体が排除されても体内にはその抗体は残っているため、基本的には同じ病原体であれば体内に入ってきても感染症にかかることはない。

 抗体は全部で5種類あり、新型コロナなどウイルス感染で調べるのは、IgM、IgGの2つ。「Ig」とは免疫グロブリンの略で、抗体のことをいう。

 この抗体検査を行っているのが、ナビタスクリニック(新宿区)。3月18日に医療医薬品の卸を通じてIgMとIgGの抗体検査のキットを30個ずつ購入。希望する医療スタッフなどに実施した。同院の久住英二理事長は、購入の理由をこう話す。

「必要性を感じたためです。すでにPCR検査で診断が付いた人には必要のない検査ですが、感染しているかどうか分からないけれど、患者さんに日々、接している医療従事者は受けた方がいい。これは医師や看護師だけでなく、病院をお掃除してくれる清掃スタッフも同様です」

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たった一滴の血液で検査が可能