「入学したての1年生にとって、中学生までの意識がだいぶ改まるほど厳しいもの。本気で何かに取り組む精神性が身に付いたり、一緒に頑張る仲間ができたりする」(牛来教頭)

 部活でも成果が出ている。運動部ではフェンシングやヨット、スキーなどで全国大会にたびたび出場するほか、化学部や物理部などでも全国大会に出るなど優秀な成績を収めているという。愛好会も随時立ち上がり、かるたでは全国ベスト16に入るなど好成績を残している。

 また、10年からは医学部を目指す生徒が集まる「医進会」が発足。病院見学に行ったり、医療の課題について自分で考えをまとめたりしている。AO入試から東北大医学部に進学する生徒も多いという。

 名古屋大も、募集人員の2割弱を占めるほどAO・推薦入試に力を入れている国立大の一つだ。愛知の名門校といえば、旭丘や岡崎などだが、合格校を見ると、トップは「公立の2番手グループ」と言われる向陽で37人だった。同校の鈴木英隆教頭は「国際化の取り組み」を要因として挙げる。

 向陽はSSHに指定されているほか、「国際」を加えた「国際科学」の教育にも取り組む。読む・書く・聞く・話すの能力を鍛えようと、最終的には実験や研究活動の成果を英語の論文でまとめ、校内外で発表する機会を設ける。

 優秀で「キャラ(個性)が強い子」が集まってきているという。軽音楽部で原子を題材に歌う生徒や、数学美の一つとして人気がある「フィボナッチ数列」が好きな生徒らがいる。

「普通のクラスでは浮いてしまうような子でも、キャラの強い子が集まっているので、お互いに刺激を与え合って、個性が伸びる環境がある。考える力だけではなく、グローバルな時代に必要な能力を鍛え、自分の興味関心を追求できる人を育てることができている」(鈴木教頭)

 自分で課題を見つけて解決策を考える「探究的な学習」が02年度から小中学校、03年度から高校に導入されたこともあり、個性を伸ばす教育に取り組む学校が増えている。その教育が、結果的にAO・推薦入試対策につながる。高校選びの参考にしてほしい。(本誌・吉崎洋夫)

※【1】AOはアドミッション・オフィスの略。受験生は志望動機、小論文、プレゼン、面接などから総合的に評価される。自分の将来と大学での学びの結びつきが強く問われる。今年度から「総合型選抜」に名称が変わる。
※【2】推薦入試は、高校での成績や取り組み、面接、小論文などが重視される。主に高校での日常的な努力が評価される。今年度から「学校推薦型選抜」に名称が変わる。

週刊朝日  2020年4月24日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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