どちらの番組でも語られたのは、死について。人は焚火の前で、亡くなったあの人を思い出す。竹山は相方のことを、勝村は仲間のことを、古市はお世話になった人のことを。

 たぶん太古の昔、人類が初めて焚火に手をかざした時から、何も変わっていないんじゃないのか。暗闇の中に浮かび上がる炎。その明るさ、温度。舞い上がる火の粉。目にしみる煙。

 どんなに世の中が進化しても、人間はやっぱり心に恐怖を抱えている。何かにおびえて生きている。焚火を囲むのにも、適切な距離が必要なせちがらさ。こんな時こそエア焚火?

 かつてノルウェーのテレビ局が、暖炉で燃えさかる炎の映像だけを8時間生中継したという。題して「全国 薪の夕べ」。長時間にもかかわらず、視聴率20%以上とったとか。

 日本のテレビも朝から晩までコロナコロナの中、一局くらいずーっと焚火でもいいんじゃない? もうトークもいらない。ただ焚火、ひたすら焚火。たまにちょっとに横切ってほしい。

週刊朝日  2020年4月24日号

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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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