では経済的な救済のため、どのような手段が講じられているのか。

 まず、家賃支払いの猶予が挙げられる。NY市の平均家賃は1LDKで2850ドル(約31万円、東京都世田谷区の標準的な価格の約2倍)とも言われ、全米でも西海岸のサンフランシスコに次いで最も高く、中間層の市民の支出の大きな部分を占めている。

 その負担を軽減するため、クオモ知事は家賃が支払えない住民やテナントに90日間の猶予を与え、家主による立ち退きの禁止を命じた。また、住宅ローンは90日間、学費・医療ローンも30日間の延期措置をとったが、あくまでも「延期」であり支払いが免除されるわけではない。さらに企業や個人事業主に対しては州税などの一部免除、救済支援ローンなどを打ち出したが、その効果はまだ未知数である。

 また、連邦政府は3月27日にアメリカ史上最高額となる2兆ドル(約220兆円)超の「コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)」を成立させ、年収7万5000ドル(約820万円)未満の納税者1人につき1200ドル(約13万円)、夫妻にはその倍の2400ドル(約26万円)、そして17歳以下の子ども1人につき500ドル(約5万4千円)を一律現金給付することを決定した。

 しかし、市民からは「焼け石に水」だという声が聞こえてくる。

「ありがたいとは思うけども、これでは全く足りないよ」と語るのは、ニューヨークで俳優業を営むクラロ・オーストリアさん(51)。ウイルス拡大前まで、週に1回ほど、仕事のオーディションを受けていたが、2月中旬からオーディション自体が完全になくなってしまったという。現在は昨年から続く副業の収入が多少あるだけで、それも来月には終了してしまう。彼は妻と10歳になる息子との3人暮らしだが、政府から2900ドル(約31万円)が支給される予定とはいえ、月々の支出は家賃も含めて最低でも2500ドル(約27万円)。現在は妻の収入があるが、この状態が何カ月も続けばそれも危うい。不安は募るばかりだ。

 とはいえ、厳しい状況でも彼はクオモ知事の外出制限の決断に賛同している。

「初めは大げさだと思っていたけど、今の(悪化した)現状を見ると賢明な判断だったと思うよ。経済はいつでも回復出来るけども、人の命は戻って来ないからね」

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史上最悪の失業者数