総務省も大慌てで準備が進めるが…(C)朝日新聞社
総務省も大慌てで準備が進めるが…(C)朝日新聞社

 コロナで経済的に苦しむ人々の「命綱」が、政府が打ち出した1世帯に30万円の現金を配る「生活支援臨時給付金」。安倍晋三首相は緊急事態宣言を出した4月7日の記者会見で「なるべくスピーディーに行いたい。5月に直ちに出していくようにしたい」と語った。

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 フリー記者の私も仕事が減ったら受け取れるのか。区役所に聞くと、職員は困惑しながらこう話した。

「お問い合わせの電話は多いですが、国はやりますと方針を示しただけで、私たちにはまだ何も情報が下りてきてないんですよ」

 相談だけでもと粘ると、

「まだ案内できる窓口もないんです。担当の課も決まっていません。私たちも待っているんです」

 ならば、と総務省の生活支援臨時給付金室に問い合わせると、担当官は「補正予算が国会を通過しないと事業自体を始められない」。同室によると給付金をもらえるパターンは2通りで、単身世帯なら2~6月のいずれかの月収が昨年より減り、10万円以下の場合。もう一つは、昨年の月収から半減以上し、月収20万円以下になった場合だという。

「対象月のうち1カ月だけ収入が減る場合も、月収10万円以下であればみなしで認めることになると思う。減り幅は関係なく、月収10万円以下に落ちた瞬間に30万円です。給付は世帯主の収入で見ていますが、共働きの一方が稼いで困っていないのでは趣旨から外れるので慎重に検討している。単純にいかないケースが多く整理中です」(総務省)

 私の場合、適用条件まで収入が減らなくても家賃と生活費を賄い切れなくなる。この条件では範囲が狭すぎて、多くの人が適用外になってしまうのではないか。あちこちの官庁にも電話していると、とある職員がこう囁いた。

「4月後半は下手にリモートワークなどせず、全部休んで収入が半減するようコントロールする人も出てくるのでは」

 そういうケースは認めるのか。もう一度、総務省に聞くと「それは不正行為になりかねないので、令和2年が終わった後で返してくれとなるかもしれません」。

 今後、混乱は避けられなさそうだ。(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2020年4月15日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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