さらに森田氏は予備校講師という立場だけでなく、自身のチャンネル「Morite2 English Channel」を運営する人気ユーチュバーならではの動画授業に対するこだわりも見せる。

「近年“教育系YouTuber”はかなり増えているのですが、そのほとんどが失敗しています。そういう厳しい世界なので、当然、今回『たたよび』を立ち上げるにあたっては色々と研究しました。授業の内容はもちろんのこと、映像が安っぽく見えないように電子黒板などの機材にもこだわりましたし、編集作業には必ず自分が関わろうと思っています。英語がきちんと理解できていないとそもそも編集が成り立ちませんし、字幕のスペルなんかもボロボロになりますからね」

 大手予備校に在籍するカリスマ講師という立場や収入を捨て、一からはじめる新たな挑戦。当然リスクも大きい。

「確かに最初は収入的に厳しいでしょうし、横槍や邪魔が入る可能性もあります。でも自分自身、『ただよび』には大きな可能性を感じているんです」

 その背景には教育格差を是正したいという思いはもちろん、自身が愛してやまない予備校業界に対する強い危機感もあるという。

 森田氏は、高校時代に通っていた「代々木ゼミナール」で受講した富田一彦氏の授業に感銘を受けて、自身も予備校講師を目指すことを決意。
その後、慶應義塾大学の文学部を卒業後、東京大学の大学院に入って言語学修士課程を修了し、米国への留学経験などを経て予備校講師となる。

「富田先生が東大を卒業なさっていたので自分も東大に行かなければと思い、東大の大学院を目指したんです。今思えばメチャクチャな理由ですけどね(笑)。とはいえ、高校時代はそれほど賢くなかったのでいきなり東大に入れるとは思えず、『何とか頑張って慶応に入って、それから東大の大学院を目指そう』と。大学に入ってからも、英米文学専攻で専門的な英語学を学びつつ、塾でのアルバイトでは分かりやすく英語を教えることを心掛けて。それだけではしゃべれるようにはならないと思い留学し、英会話のスキルを磨いて英語教授法の資格も2つ取得しました」

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進まない予備校業界の世代交代