政府は新型コロナ対策で休校の影響で仕事を休んだ保護者に対して、企業のパートを含む従業員には日額8330円、個人事業主には4010円を上限とする助成金を出すことを決めた。しかし、こうした制度を利用しない中小企業も多い。さらに政府は、接待を伴うナイトクラブや風俗業の関係者は「公金を投じるのにふさわしくない業種との判断」(厚労省)として、支給対象外とした。

「風俗やキャバクラに勤める人のなかには、休業で露頭に迷いかねないシングルマザーもいます。いわゆる社会的弱者が少なくない。政府や自治体の政策に不満の声をあげることのできるひとが、どれだけいるのか。どのような業種であれみんな必死に生活し、生きている。しかしなぜ、『夜の街』だけを名指ししておいて、パチンコ店に行くなといわないのでしょう。先週、知人が送ってくれた通勤時の品川駅の写真を見ましたが、歩く人と人の間は10センチもない。車内に至っては密接空間そのものです」(Zeebraさん)

 バーやナイトクラブのように、「おかしい」と声をあげにくい人たちが働く業界を名指しするならば、せめて少しでもいい、補償を約束して欲しい、昼と夜の職業で線引きをしないで欲しい。Zeebraさんはそう訴える。

 「夜の街」には、バーやダンスクラブから接待のあるクラブなど多様な文化が根づき、近年は外国人観光客を呼び込む「インバウンド戦略」の一つとしても注目されるようになってきていた。Zeebraさんは2016年、なかなか世間に認知されていなかった「夜の街」の文化を紹介する渋谷区観光大使アンバサダーに就任し、国内外で様々な活動をしてきた。

「私もこれまで夜の街の文化を盛り上げようとやってきました。よい方向に向かってきた矢先に、仕方のないことですがとても残念です。でも、こんなときだからこそ、小池さんにも夜への偏見をとりさって頑張って欲しいし、安倍さんも日本がコロナに負けないよう、みんなを引っ張っていってくださいね」
 
 こうした声が届いたのだろうか。4月3日には、東京都が新型コロナの感染拡大を受けて時短営業や休業する店舗を対象に、独自に支援する制度を創設する方針を固めたと報じられた。だが、金額や支給される時期もまだ公表されていない。休めばその日の収入が途絶える人も多うえに、支給額も生活して行けるだけの額となるかはまだわからない。さらに、風俗やキャバクラなど、対象となる業種にどこまでが含まれるのかもまだ不明だ。

「『おかしい』と声をあげにくい人たちが働く業界のひとたちはまだまだいます。できるだけ広い範囲で、補償を約束して欲しいです」(Zeebraさん)

 昼も夜も線引きはない。声のあげられない人たちの犠牲の上にではなく、「みんなで」コロナに勝つ未来を手にしたいものだ。
(本誌・永井貴子)

※週刊朝日オンライン限定記事