本多:ここはかなり丈夫らしいから大丈夫だと思います。木造の劇場がいま3軒ですかね。柱は全部鉄骨に入れ替えて丈夫にしてるんです。スズナリなんかもそうです。外から見たら古い建物なんだけど、ガッチリ鉄骨が入ってるから、地震には強いんです。木造の劇場はいま許可がおりないので、古い木造の良さを残してるんです。

林:下北沢が演劇をやる若い役者さんとか演出家の聖地となって、「いつか本多劇場でやりたい」「スズナリでやりたい」って志すわけですよね。今、東京が世界でいちばんの演劇都市と言われてるみたいですけど、その礎を個人でつくられたんだからすごいと思いますよ。

本多:うちの劇場から育った人は、いっぱいいるんですよ。野田秀樹が育ったし、ケラリーノ・サンドロヴィッチが育ったし、大衆演劇の梅沢富美男とか、いろんな人が育ってますね。松尾スズキだって、今度、シアターコクーンのいちばん偉い人(芸術監督)になっちゃったしね。

林:そうですよね。

本多:シライケイタといういま売れっ子の脚本家・演出家がいるでしょう。このあいだ会ったから、「ホン(脚本)書いてくれや」と言ったら、「3年後ですね」だって(笑)。いい人がいっぱい出てきましたよ。これからまだまだ楽しみですね。

林:私も、この年のおばちゃんにしてはよく舞台を見てるほうだと思いますけど、とてもついていけません。注目の人が多すぎて。

本多:それだけ演劇に魅力があるかわからないけど、ずいぶん育ってますよ、このごろ。

林:スズナリが舞台になった「淋しいのはお前だけじゃない」は、今から何年ぐらい前でしたっけ。

本多:市川森一さんのホンだよね。30年以上前でしょう(編集部注 1982年)。スズナリがモデルになって、これはテレビドラマの賞(向田邦子賞・テレビ大賞)をとったんですね。演出の高橋一郎さんが「つぶれそうな劇場を探してる」って言うから、「じゃ、スズナリがちょうどいいや」って、スズナリがつぶれる劇場になっちゃった。できた翌年なのに(笑)。

次のページ