居間に戻りテレビをつけるとコロナのニュースばかりで気が滅入る。ちょっと前までは芸能人のゴシップ花盛りだったのに、ふぅ。スマホを開く。知り合いが映画のイベント後の会見でスキャンダルの謝罪をしていた。

 記者「奥さんとお相手のどちらが好きですかー?」。なんだその質問は? バカのふりしてるのか、もしくは子供新聞のこども記者? しばらく考えた後、「妻を傷つけることになるのでお答えできません」。そらそうだ。「もちろん妻です」なんて言えないよ、こんなところでな。それでいいと思うな。これ聞いて「やっぱり不倫相手が好きなんだー、やーいやーい」なんて喜んでるおバカさんはつまんないユーチューブでも開設して、登録者が実家の母だけという底抜けの哀しさを味わいなさい。

 そんなことを思いながら、洗濯物を取り込みにベランダへ。おやおや、もう「Cチーム」は乾いたようだ。そうか、くたびれて生地が薄くなっているから乾きも速いとみえる。

 気づくと私はまだパジャマのままだった。子どもたちが昼飯に焼きそばを作れとせがんでくる。わかってる。休日の焼きそばは、なんか美味しいよな。

週刊朝日  2020年4月10日号

著者プロフィールを見る
春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

春風亭一之輔の記事一覧はこちら