基本的な暮らしの仕組みをシンプルにする一方で、自分がこの先の10年、何をしたいか? 何を残したいか?も考える。そして自分が一番大切にしている“これは絶対に譲れない”というものの整理にも着手してみる。

「私はたとえ毎日使うものでなくても、本がとても大事です。でもそういう方は多いのではないですか? 私は本の整理は60代半ばにやりましたが、約1年かかりました。書斎に千冊以上の本がありましたが、自分がこれからやりたいと思っている仕事に関わる本以外は手放したのです」

 最終的に必要な本は700冊に絞り、それを新たな書棚にカテゴリー別に収納し直した。肩や腕や腰に負担がかからないよう、「本片づけ」は1日1時間というルールを決めて。

「人生後半の片づけは、やはり体力的に余裕のある60代のうちに一回きちんとやっておくことをおすすめします。自分の人生にとって大事なものを把握しておくと、そののち老人ホームなどに入ることになったときも、あわてないですみますから」

 別に家の中が散らかっていても、現在の暮らしに支障がなければいいだろうという考え方もあるかもしれない。が、ちょっと俯瞰して考えれば、やはりある程度片づいている家のほうが合理的に生きられる。たかが「片づけ」、されど「片づけ」なのである。

週刊朝日  2020年4月10日号より抜粋