「食料の確保や在宅勤務が不可能な場合の通勤などで外出する時には、『移動証明書』に自宅の出発時間、目的地を記載して携帯しなければいけません。さもないと135ユーロ(約1万6千円)の罰金が課されます。フランス人は言うことを聞かなかったのでしょう。罰金も当初は38ユーロ(約4500円)でしたが、1日で135ユーロに変わりました」

 スーパーや食料店は開いており、特に品切れもない。ただ、人影はまばらで、見かけるのはジョギングなど運動をしている人だけだという。1時間程度の運動は移動証明書携帯のうえで許可されている。

「パリの街は静かですが、不満と不安、怒りが渦巻いています。先日は2階の窓からワーと怒鳴る人の声が聞こえました。相当、頭に来ているのでしょう。かと思えば窓から大音響でモーツァルトの曲と歌声が流れてきました」

 閉塞(へいそく)感をなんとかしようとする動きも出てきたという。

「街では夜8時になると、人々が窓やベランダに出て、食前酒と称してアパートの上下左右や向かいの部屋の住人と乾杯をするんです。これはコロナウイルスと闘う医療関係者に『ありがとう』と感謝を口にする場でもあります」

 連日、新聞記事の8割はコロナウイルス関連の記事で埋まっている。その報道によると、マスクが手に入らないことへの不満が国内で高まっているという。

「フランスでは政府がマスクを管理しており、一般の人は処方箋(せん)がないと購入すらできない。政府は、マスクは病人以外は感染を防止する効果はないと主張してきました。しかし、アジアの国をみると、みんなマスクをしている。おまけに感染者も死者も欧州より少ないじゃないか、という批判の声が高まり始めたそうです。マスクの効果は医療関係者の間でも議論が分かれています」

 パリは、フランスでも感染が集中している地域の一つ。富裕層は地方の別荘に避難している、との話も出ているという。

「僕も4月中旬に帰国する予定なのですが、どうなるかわからないですね」

 韓国では、ライターの田中将介さんによると、ピリピリとした雰囲気だという。

「ホテル、病院、レストラン、至るところに消毒用のハンドジェルが置いてあります。見渡せば、ほぼ全員がマスクをしていて、皆が口をそろえて『マスクをしていないと皆んなにみられるよ』と言うくらいです」

 駅のホームでは、日本語でも「感染に気をつけてください」というアナウンスがずっと流れているという。出生年度によってマスクを薬局で買える日が限定され、田中さんも薬局が大行列になっているのを見た。

「韓国の美容クリニックは、コロナ問題でお客さんが来ないでとても困っています。韓国に住んでいる日本人に激安のキャンペーンを打ったり、韓国人に対してマーケティングを強めたりしています。あらゆる業界で、週3日勤務になったり、仕事場に来なくていい(実質解雇)と言われたりなどしています。仕事に困った人たちが職を探し回っています」

 韓国語がわからない田中さん。それでも、カフェなどで韓国人同士の会話に耳を澄ませると、『コロナ』という単語がたくさん聞こえてくるという。(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事