不動産のルールも大きく変わる (週刊朝日2020年4月3日号より)
不動産のルールも大きく変わる (週刊朝日2020年4月3日号より)
相続の主な変更点 (週刊朝日2020年4月3日号より)
相続の主な変更点 (週刊朝日2020年4月3日号より)

 4月から約200項目に上り変更された民法が施行される。消費者を守る内容がある一方で、不動産の賃貸などでは注意すべきところも目立つ。

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 部屋を借りるときに払った敷金は、原則として契約終了時に戻ってくる。通常の使い方でできた傷や経年劣化については、借り手が負担する必要はない。

 国民生活センターによると、敷金や原状回復費用などを巡る相談件数は、ここ数年1万3千件前後で高止まりしている。国交省はガイドラインで借り手の保護を定めているが、次のような相談も寄せられていた。

「十数年住んだ賃貸アパートを退去したが、大家から請求された原状回復費用が高額。国交省のガイドラインをもとに反論したが、取り合ってもらえない」

 家具を置いたことによる床のへこみや、テレビや冷蔵庫の後ろの黒ずみなどは、「通常の使い方」にあたるので修理費用を負担しなくてよい。一方でペットによるひっかき傷やたばこの汚れなど、負担が認められるケースもある。

「契約書に『入居期間終了時に新築同様にして返す』などと書いてある場合は、経年劣化による傷みでも修理費を求められることがあります。契約を結ぶときにしっかりと確認しましょう」(民法に詳しい吉田修平弁護士)

 土地を貸し借りする期間の上限は50年に延びる。今までは20年までで、それ以上使い続けたい場合は契約を結び直す必要があった。なお、建物を所有する目的で借りた土地は、借地借家法の対象になるので、もともと借りる期間に上限はない。

 建物や設備に欠陥があったり、注文と違っていたりした場合、修理や値引きを要求できる。これまでは契約を解除するか、損した分の賠償を求めることになっていた。

 こうした「欠陥」については、法律上の呼び方も変わる。今までは「瑕疵(かし)」と呼んだが、「契約不適合」になる。

 アパートに備え付けのエアコンや給湯器が壊れたり、雨漏りしたりしたときに、借り手が自分で直せるようになる。修理そのものは本来、大家に責任があることに変わりはない。修理が必要なことを大家に通知しても対応してくれない場合には、借り主が自分で直して費用を請求できる。

 ただし、本当に修理が必要だったのか、費用は適切だったのかなど、トラブルになりそうな点もある。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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