IOCの発表を受け、五輪後の8月25日に開幕予定の東京パラリンピックを開催する国際パラリンピック委員会や、世界陸連も延期検討の方針を支持すると表明した。また、カナダのオリンピック委とパラリンピック委は通常開催なら選手団を派遣しないと表明し、1年延期を求めた。明確に選手団派遣見送りの態度を表明する初めての国・地域となった。

 今後の焦点は開催時期だ。ただ、どの時期にしてもハードルは高い。IOCは延期の日程調整が困難な理由として、重要な会場が使えなくなる可能性がある、多くの宿泊施設が既に予約されている、最低でも33競技の国際的な日程の調整、などを挙げている。

 組織委内には年内延期を求める声があることを、一部メディアは伝えている。森会長も「我々は2020年の方向。今の段階ではそう申し上げるだけ」と話した。だが、感染拡大の終息にめどが立たない現状では現実的ではない。

 1年延期の場合、7、8月には世界水泳選手権(福岡)、世界陸上選手権(米国)がある。感染拡大の終息も見通せない。

 2年延期なら、北京冬季五輪やサッカー・ワールドカップ(カタール)があるが開催時期は重ならない。それでも、例えば、五輪後に分譲マンションになる東京・晴海の選手村への懸念がある。住宅ジャーナリストの榊淳司さんは言う。

「すでに分譲は進み、2年延期となれば契約者の入居時期が遅れ、大騒ぎになるのでは。延期するかはっきりしない現状で、売り主も混乱している。モデルルームの維持や新たな広告費など、さらに数十億円ほどかさむことになるでしょう」

 関西大学の宮本勝浩名誉教授は、中止なら約4兆5151億円、1年延期でも約6408億円の経済的損失があると試算した。

 混乱の中、26日から聖火リレーが始まる。組織委担当者は「予定通りに開催」と言うが、予断を許さない。組織委の武藤敏郎事務総長は23日の会見で「実施形態をどうするか検討したい」と述べた。

 ギリシャではセレモニーに登場した人気俳優を見ようと観客が殺到し、感染拡大を恐れて中止となった。組織委は最初の福島、栃木、群馬の3県に対し、密集状態を避けて観覧するよう求めた。だが、福島でTOKIOのメンバーが走るほか、その後も石原さとみや綾瀬はるからが参加する予定で、混乱は必至だ。

 福島で第1走者を務める2011年サッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表「なでしこジャパン」のメンバーの1人、川澄奈穂美選手は辞退を表明した。23日午前に自身のツイッターで「米国在住の為移動時にリスクが高いこと、自分が感染しない・感染源にならないこと、チームやファンの方々に迷惑をかけないことなどを考慮し決断しました」などと書き込んだ。

 40年ごとにボイコットなどの問題が起こることから麻生太郎財務相が形容した「呪われた五輪」。IOCのバッハ会長は結論まで「4週間以内」としているが、混乱を避けるには早急な決着が必要だ。(本誌・秦正理、取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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