■辺野古埋め立て反対した小泉氏

メア:米国も安全保障政策は国の専権事項であって、地元が決められるものではありません。もちろん、地元に十分配慮する必要があります。米軍再編計画は負担軽減ですが、同時に抑止力も維持しなければなりません。だから難しい。

山崎:私は辺野古移設に賛成する立場で沖縄に長く滞在したことがあります。辺野古地区を戸別訪問して、住民と泡盛を酌み交わしながら説得しました。その場に小泉総理にも電話してもらって、名護市長だった島袋吉和さんは賛成に回りました。だけど小泉さんは埋め立てには反対でした。キャンプ・シュワブに丸ごと移せと言っていました。額賀(福志郎)防衛庁長官がV字形の滑走路を建設する案を出したのだけれど、それも絶対ダメだと言った。けれども、私たちがだんだんと埋め立てを推進していったのです。沖縄が地上戦を体験し、米軍統治下に置かれた歴史を踏まえれば忸怩(じくじ)たる思いもあります。

木村:やはり、米国一辺倒ではなく、もう少し多角的な視点が必要です。

山崎:国連中心主義と自由主義諸国との協調、アジアの一員がわが国の外交3原則です。この基本方針を決めたのは1957年で、安保条約の締結より前のことなのです。この3原則をもう一度議論したほうがいいと思います。アジアの一員を掲げているのだから、中国との関係についても話し合うべきだ。ですから、中国の脅威を説くだけではダメです。現在は日米同盟の堅持と中国との協商の推進ですが、この具体的な中身をどうするのかということです。だけど、いまは国会議員のレベルが落ちているからね(笑)。なかなか議論できる人はいないけど、やっぱりやる必要がある。

メア:私が講演でよく申し上げることは、日本の多くの国民は米国が日本の防衛をすると思っている。それは誤解です。安保体制の正確な意味は、自衛隊に協力して日本防衛に寄与することです。現在、日米は対等な同盟になっています。昨年5月、トランプ大統領が来日した時に、安倍総理と海上自衛隊横須賀基地を訪れました。護衛艦「かが」と強襲揚陸艦「ワスプ」に乗艦し、中国に対する強いメッセージになりました。さらに日米同盟を強化し、現実的な対応ができるようにしなければなりません。

木村:メアさんの抑止力を高めるというお話は説得力がありますが、いまは外交努力によって各国と融和していくことが大切だと思います。日米関係だけではなく、中国や北朝鮮とも冷静な対話の場が必要です。

(構成/本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2020年3月27日号