木村:後にパウエルさんは判断を誤ったと語りました。

山崎:そう。その後、アーミテージさんから「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」と言われ、地上部隊を派遣することを求められました。日本は基本的に国連中心主義、自由主義諸国との協調、アジアの一員が外交3原則ですから、国連決議を取るように求めた。ずいぶん努力されたようですが、結局、決議は取れなかった。それで湾岸戦争の時の決議を援用するということで、やむなくイラク特措法をつくった。一応、戦争が終息した後に、人道支援と称して派遣したというのが経緯です。

メア:日本政府は、ただ米国の言いなりになっているわけではない。本当にそうだとしたら、私は外交官時に仕事で苦労せずに済みました。日本と米国の国益はほとんど一致していますが、一致していない場合はハッキリと言いますよ。

木村:日米地位協定については、与野党を問わずに改定を求める声が聞かれます。私は日米地位協定の見直しは即座に着手しなければならないと思っています。

山崎:地位協定について言えば、特に沖縄で米軍人・軍属による事件、事故が繰り返されています。しかし治外法権的に、刑事責任を問う体制が非常に限定されています。

木村:公務中の米兵の事件は、米国側が第1次裁判権を持つ問題ですね。

メア:日本側に裁判権がないという声がすごく多いのですが、当然のことながら第1次裁判権は日本側にあります。例外は二つだけ。日本人が関わらない基地内の犯罪と、もう一つは公務中の犯罪です。ほとんどの人は、地位協定があるから米兵が犯罪を起こしても基地の中に逃げたら、日本は何もできないと思っている。

木村:95年の沖縄の少女暴行事件では、米兵3人を日本の検察が起訴するまで引き渡さなかった。

メア:それは日米合同委員会で見直しています。現在は凶悪事件(殺人、強制性交など)では、起訴前に日本側に引き渡すように運用が改善されています。

木村:それはあくまで米国側が好意的考慮を払った場合で、被疑者の身柄が引き渡されたことは数えるほどしかありません。

メア:あります。06年の横須賀の殺人事件では、日本側の求めに応じて速やかに引き渡しています。

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