「国内では豪華列車ブーム、海外では『ビジネスクラスで行く○○』の活況が伝えられましたが、どちらもこの世代が牽引(けんいん)しました。また、今は新型コロナウイルスの騒ぎで全国の観光地はガラガラですが、それまでは大人女子と外国人観光客だらけといってもいい状態でした」

 確かに、京都市が毎年行っている調査を見ると、近年、訪れる日本人観光客のうち50歳代以上の大人女子が実に4割強を占めている。その数は推計ながら実に1900万人に上る(本誌18年11月16日号)。

 旅行に限らず、ファッションやグルメ、美容……。大人女子が絡む消費は多岐にわたる。夫婦関係の実態を考えると、彼女たちは家計全体の財布のひもも握っている。大人女子消費は実は巨額にのぼるのだ。

 となると、コロナショックで不況感が強まるこのニッポンにとって、大人女子たちは頼もしい存在になる。彼女たちの消費を刺激できれば、企業は業績を伸ばせるし、日本の景気全体を上向かせる可能性すらある。先の阪本所長は、

「不況期に育った今の若者はトレンドを発信しないし、モノも買いません。これからの日本の消費を支えるのは50代以上の大人世代です。とりわけ大人女子消費は伸びが期待でき、唯一残された“宝の山”とすら思えます。もっとも先に述べたように、彼女たちをシニア扱いし、そこに気付いていない企業が多いんですが……」

 もちろん目を凝らせば、先進的な動きはそこかしこに出てきている。

 資生堂が50代以上向けに出している化粧品総合ブランド「プリオール」。15年の発売以来、50~70代にウケて毎年2ケタ成長を続けてきたヒットブランドだ。それが、この2月から、さらに50代へのアプローチを強め始めた。新しいタイプの大人女子たちが出現してきているというのだ。

 プリオールは加齢による「下がる」や「凹凸」、「影」など大人女子が気にする現象を「大人の七難」と名付け、その解決を売りにしてきた。とりわけ、化粧が面倒になってくることを「おっくう」と名付け、心理面までも七難に加えたことが評判だった。畠山真紀ブランドマネジャーは、

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