直木賞作家が逃避の果てに堪能した“司馬遼太郎”と“串カツ” (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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直木賞作家が逃避の果てに堪能した“司馬遼太郎”と“串カツ”

連載「出たとこ勝負」

黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

※写真はイメージです (Getty Images)

※写真はイメージです (Getty Images)

 またまた人生を舐(な)めてしまったわたしは四年間、麻雀とバイトの明け暮れで、よめはんと同棲(どうせい)しているにもかかわらず就職活動などまるでせず、卒業間近の二月になって、彫刻科の教授が「スーパーの○○がひとり欲しいというてきた。誰ぞ行くか」というから、手を挙げた。

 わたしはスーパー○○で建築意匠を担当したが、まるでおもしろくなかった。美術教師になったよめはんの夏休みや冬休みが羨(うらや)ましくてしかたない。よっしゃ、おれも教師になって、よめはんとインドへ行こ──。会社に内緒で母校の聴講生になり、不足していた教職課程の単位をとって教職免許を取得し、大阪府高校美術教諭の採用試験を受けたが、不合格。これではならじとがんばって、翌年、採用された。そしてその十年後に高校教師も辞めた。いまこうして食えているのは強運としかいいようがない。

 前置きが長くなった。逃避だ──。昼、起きてパソコンを立ちあげようとしたら、映画試写会のハガキが眼にとまった。『燃えよ剣』。日付を見ると今日ではないか。小説誌の締切りが明日に迫っているが、わたしはただちに逃避行動に入り、よめはんの部屋に行って、「これからいっしょに映画に行きます」「あかんねん。美容院、予約してるから」「美容院は逃げません。映画は二時間後です」

『燃えよ剣』は司馬遼太郎の原作を過不足なく映像化していておもしろかった。帰りに食った串カツも美味かった。

週刊朝日  2020年3月27日号


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黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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