「そこで(7月5日に)都知事選と衆院選のダブル選挙の可能性が大いにあると思います」

 こうした思惑とは別に、直接の当事者である選手たちは五輪開催の行方が気が気ではないだろう。世界的にもスポーツイベントの延期・中止が相次いでいる。スポーツライターの折山淑美さんはこう指摘する。

「五輪に合わせて選手はコンディションをピークに持っていくのに、年単位での延期となれば、ゼロから作り直す必要がある。1年もあれば、各競技内で勢力図も変わるし、好不調やけがもある。選手選考はやり直すしかなくなるでしょう」

 一方で、延期はマイナス面だけではない。

「バドミントンの桃田賢斗選手は交通事故からのけが明けで、多少ブランクがある。完全回復が見込めますし、延期もありと捉えられるでしょう。不調が続いていた競泳の萩野公介選手も同様です。ただ、よく言及される(白血病で療養中の)池江璃花子選手については、じっくり治療して4年後のパリ大会を目指すほうを応援したい」

 ただ、経済的な影響は避けられない。東京都オリンピック・パラリンピック準備局によると、五輪による経済波及効果は総額32兆円に上る。延期・中止となれば、楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジストは三つのシナリオを想定する。

「メインシナリオは秋にずらしての今年中の開催。その場合の株式市場は年後半にかけて回復していくのでは。リスクシナリオは来年に延期で、株式市場はさらに下値を探るかもしれません。ワーストシナリオは中止で、弱気相場が続いて回復に時間がかかるでしょう」

 仮に中止になった場合の試算を、SMBC日興証券は出している。

「感染拡大が7月まで続き、五輪中止となった場合には、五輪需要6600億円含む7・8兆円程度の経済的損失が考えられます」(担当者)

 中止でも、IOCや米テレビ局NBCは、全ては補えないものの保険で損失をカバーできる。一方、多額の損失が出る日本にとって中止だけは避けたい。

 決断の時は近い。(本誌・秦正理、浅井秀樹)

週刊朝日  2020年3月27日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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