その上で改葬許可申請書と受け入れ証明書を今の墓がある自治体に出すと、「改葬許可証」が交付される。これがあれば、遺骨を取り出すことができる。

 注意したいのは寺との関係だ。最近は「離檀料」についてのトラブルが多発している。離檀料とは、檀家をやめたり、墓じまいをしたりする際にお布施をする慣習のこと。

「金額について決まりがあるわけでなく、払わないからといって寺の側は改葬を拒むことはできません。でも、ずっと世話になってきた寺に何の相談もせずに手続きを進めてしまえばトラブルになりやすい。墓じまいをするなら、まずは寺の住職に相談したほうが無難です」(吉川さん)

 墓の撤去など具体的な作業は、専門の業者に任せる。複数の業者から見積もりをとって、適正な価格かどうか見比べる。新しい墓地に墓石を移す場合は、撤去にかかる費用とは別に、移動などの費用もかかる。重機を使う場合には追加の費用もかかるため、見積もりの際にチェックしておこう。

 弔い方では墓をもたない散骨や手元供養などの方法もある。いったん散骨すると、後からは遺骨を取り戻せないので、時間をかけて検討する。

 ここまで見てきたようにお墓選びは複雑だ。自分だけではなく、親族や故人の関係者の希望なども踏まえて決めよう。守るべきポイントを下の表にまとめた。わからないことは自治体の窓口や、信用できる業者に相談する。安い墓地が売りに出されたからといって、焦って契約するのは禁物だ。春のお彼岸に、家族とじっくり話し合ってみよう。

■失敗しないためのポイント
1 最優先は墓の場所。お参りしやすさを重視
2 必ず見学して雰囲気や管理状況を確かめる
3 値段や供養方法は様々。寺や霊園に要確認
4 墓じまいの手続きは自治体に遠慮なく聞く
5 離檀料トラブルは住職との事前相談で回避

(本誌・池田正史)

週刊朝日  2020年3月20日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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