ドラマがクランクインするとき、もう撮影後に映画を作ることは決まっていた。

「ドラマ放送中に大きな反響をいただけて、自分でも驚きました。生徒役も、“お芝居はこれが初めて”という子が多くて、控室は怪獣がいっぱい(笑)。その愚直な演技には、すごく学ぶことが多かったです。子供って、大人が想像するよりも、世の中のことをいろいろわかってるんですよね。僕自身も、中学のときは、『先生っていうのも、与えられた枠の中でやらなければならないことが多くて大変だな』『先生って役柄を演じているのかな?』って、思ったりしましたから。自分のダメなところは隠して、先生という立場に徹しなければならない、その悲哀をちょろちょろ感じていたんだと思います」

 今回、ドラマ「おいしい給食」から「劇場版 おいしい給食 Final Battle」まで、一連のシリーズに関わったことで、市原さんの中には、大きな収穫があった。

「今までは、どうしても『どう見えるか』という“見せ方”にこだわっている、自意識過剰な自分がいたんですが、そういうのは全部捨てて、『現場で、どう甘利田幸男としていられるか』という“あり方”、それだけを重視しました。だから今回は、極端なことを言えば、“甘利田のシャワーシーンを撮られてしまった”ように見えることが理想です(笑)」

 先月で33歳になったが、実はつい最近まで、給与明細を見たことがなかった。

「今自分がやっていることを、『お金のため』『生活のため』と考えたら、気が進まないことをやらなきゃいけなかったり、少しでもギャラのいい仕事を、みたいな邪な考えが浮かんでしまうこともありそうじゃないですか。僕は、そういうのは嫌なんです。給与明細を見て、『この作品でいくらになるのか』とか考えたくない。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、僕らがお客さんからいただくものって、本当にプライスレスなので」

 話を聞いていると、シンプルに“熱い男”というよりは、どこか昔気質な“芝居バカ”で、その表情には少年ぽさも残るが、写真や音楽、ジム通いなど、ハマっている趣味は多い。そうして、「今は、毎日を本気で生きることだけがすべて」と言い切る。

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