東京マラソンで力走する大迫傑(手前)=代表撮影
東京マラソンで力走する大迫傑(手前)=代表撮影

 東京五輪代表選考会を兼ねた3月1日の東京マラソンは、大迫傑(すぐる=ナイキ)の日本新記録に沸いた。自身の日本記録を21秒更新する2時間5分29秒。五輪代表に内定するとともに、新記録樹立で贈られる1億円の賞金を手にした。自身2度目の獲得だ。

【写真】雄叫びをあげゴールした大迫の印象的なシーンがこちら

「やはり、選手にとって自国開催の五輪(出場にかける思い)が大きいでしょう。さらに1億円というのもあります。(ナイキ社の厚底シューズ効果もありますが)シューズより1億円のほうが大きいですね」

 こう称賛するのは、プロランニングコーチでマラソン解説者の金哲彦さんだ。

 ただ、2連覇したビルハヌ・レゲセ(エチオピア)より1分14秒遅い4位。日本と世界との差は縮まっておらず、東京五輪では厳しい戦いになりそうだ。とはいえ、悲観論ばかりではない。

「大迫選手の日本新記録よりも、それ以下の日本選手が6分台(2人)、7分台(7人)を出したことのほうが注目ですね。(日本男子のレベルが)完全に底上げされました」(金さん)

 早大出身の大迫を含め、箱根駅伝経験者の活躍が目立った。日本勢2、4、10位の高久龍(ヤクルト)、定方俊樹(MHPS)、設楽悠太(ホンダ)は東洋大出身。同6、7、9位の小椋裕介(ヤクルト)、下田裕太、一色恭志(ともにGMO)は青山学院大出身。いずれも強豪校で知られる。同5、8位の木村慎(ホンダ)、菊地賢人(コニカミノルタ)は明大出身だ。

 関東学生陸上競技連盟の上田誠仁駅伝対策委員長は、こう話す。

「箱根駅伝で終える選手が多いなかで、実業団に進んでマラソンをという志を持った選手が近年多くなっています。大迫選手はその筆頭。彼は昨年の東京マラソン(途中棄権)とMGC(マラソングランドチャンピオンシップ、3位)で悔しい思いをし、それをモチベーションに転化した。彼の走りに(他の選手も)たくさんの勇気や元気をもらったと思います」

 現場でテレビ解説をしていた金さんも、こう語る。

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