東大本郷キャンパスで例年は合格掲示板が立つ場所も、人影がまばらだった(撮影・大野洋介)
東大本郷キャンパスで例年は合格掲示板が立つ場所も、人影がまばらだった(撮影・大野洋介)
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、掲示板による発表が取りやめに。受験生などはウェブ上で確認した
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、掲示板による発表が取りやめに。受験生などはウェブ上で確認した

 3月10日、東京大学と京都大学の合格発表の日。例年であれば、合格者の歓喜の声であふれている東大本郷キャンパスは閑散としていた。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東大をはじめ多くの国公立大学で学内での発表を中止。ウェブ上などでの公表になった。

 いつもは掲示板が立つ、東大のイチョウ並木通りも人影はまばら。そんな中でも、やはりキャンパスで合格の喜びをかみしめたいとわざわざ足を運んだ受験生もいた。

 浪人生の児玉祐真さん(19)は、合格発表時間の12時より1時間早く、11時に東大に到着。昨年のこの日は、自分の受験番号がない掲示板を前に絶望に浸っていた。今年の結果は、理科一類に合格。思わずこぶしを握った。

「掲示がないのは残念ですが、苦い思いを残した場所で雪辱を果たすことができた。母に報告したら『息子を誇りに思う』といってくれて……本当にうれしくて涙が出ました」

 東大の赤門には、ニコニコ顔の制服を着た女子の姿もいた。私立市川(千葉)の早田みのりさん(18)は、自宅で合格者番号を確認。文科二類に合格していた。赤門の前では予備校の講師が東大合格者を迎えることになっていた。

「歓喜の“叫び”とともに、母と妹と抱き合って泣きながら喜びました。将来の進路はまだ決めていませんが、イギリスなど海外に留学したい。視野を広げながら、これからのことを決めていきたいです」

 一方、予備校にも、祝賀会などは自粛したものの、報告に訪れる受験生の姿があった。河合塾本郷校(東京)に通っていた浪人生の石原実季さん(19)は、文科一類に合格。群馬から毎日、東京まで通っていた。合格は、塾へ報告に向かう新幹線のホームで知ったという。

「毎日、群馬から通いうのは大変だった。自分の受験番号を見つけて、すぐ友達や高校の先生に報告。新幹線の車内で号泣しちゃいました」

 今年の東大の一般入試の志願者は9259人で、3010人が合格した。東大は入学者が首都圏出身者や男子に偏っていることを課題と考えているが、今年の合格者は関東を除く地方出身者が1278人で昨年より58人増加。女子の合格者も556人と前年より46人増えた。東大の“営業努力”が実ったと見られる。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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