東剛さん(68歳・仮名)は、義理の息子のことでため息をついている。

「45歳の義理の息子は1部上場企業に勤め、年収は1千万円以上の高収入、妻で私の娘は40歳で共働き。ところが孫が中学生になると義理の息子が『新聞配達でもいいから、とにかく働きなさい。自分が稼いだお金で好きなものを買いなさい、塾代を払いなさい』と命じたそうです。娘は『とんでもない』と怒り心頭。子供をより良い環境で育てるのが親の務めと義理の息子に進言しても『働くことが悪いとは思わない』と、自分の主張を曲げないのです」

 義理の息子の言い分は非常識に聞こえるが、前述の澁川氏は、高収入男性が妻に少額の生活費しか渡さなかったり、未成年の子供に「働け」と命じたりする事例が目立っているという。

「このケースは二つに分類されます。一つはケチタイプ、もう一つは、子供に厳しいのが愛情と勘違いしているタイプです。早いうちから自分で小遣いを稼ぐことで、子供のためになると思い込んでいる。こういう男性のほとんどが、自分の父親から同じことをされてきたといえます」

 子供を強制的に働かせるのなら、離婚も辞さないと娘は覚悟を決めたそうだ。東さんは「孫のためにも別れる選択もありだろう」と呟く。

 老後といっても、人生100年時代。先はまだ長い。離婚してもしなくても、どのような人生を過ごしていきたいかという将来のビジョンが必要だ。一人ひとりの終活のあり方にも影響を与えるというのは、言うまでもないことだ。(作家・夏目かをる)

【前編『ふらっと「家出離婚」が急増 世代問わず、夫は訳が分からず』】

週刊朝日  2020年3月13日号より抜粋