私たちもの書きは、自分の言いたいことや感じたことにぴったりした言葉を探すのだが、彼らはどうとでも解釈できる言葉を探すのだとか。

 意地悪くいえば、言い逃れのできる言葉探しといえなくもない。どうしても抽象的な言葉にならざるを得ないのではないか。

 その言葉を使う政府関係者の言葉から、心が感じられないのは当たり前。話している本人の心から出た言葉ではないからだ。

 自分に発熱があっても、「基準」に症状があてはまらなければ、診察を受けることもできない。今回の大臣会見で、できるだけ自宅待機で病院に行かないように言われては、手遅れにならないかと気が気でならない。PCR検査が民間で受けられるようになると、急速に感染者の人数が増えて、それを恐れているのではと思ってしまう。

 急遽、総理から小中高の休校要請が発表されたが、対策自体は大切だとして、受け手の家庭や学校への援助などが同時に必要となる。個人へ押し付けられることがないよう願いたい。

週刊朝日  2020年3月13日号

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下重暁子

下重暁子

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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