適応能力は大事です。

 食事だけでなく競技場の施設があまりよくない大会もあります。そんなとき文句を言ってナーバスになるのではなく、そういう環境に自分が合わせていくことも必要だと思います。北島は多くの海外の試合に出てきましたが、どんなに劣悪な環境でも平気でした。

 30年以上前、私は学生時代の4年間、早大水泳部の稲泳寮で生活しました。住み込みのおばちゃんが食事を作ってくれて、1年生が配膳します。どんぶり飯を何杯もおかわりするのはめずらしくないことでしたが、当時に比べると食が細い選手が多いように感じます。三度の食事以外でも、必要に応じてプロテインをとったり、味の素から提供を受けている「アミノバイタル」を飲んだり、疲労回復によいとされるものも総合的に取り入れています。

 シエラネバダのトレーニング施設にレストランができたのは04年。それ以来ずっと勤務している仲のいいシェフがいて、つきあいは16年になります。彼は私の顔を見ると、なぜか「ドラえもん」と言い、彼は体格がいいので私は「ジャイアン」と返します。

 彼ら現地のスタッフともっとコミュニケーションを取るために今回、手のひらサイズの音声翻訳機「ポケトーク」を購入しました。おいしい料理を作ってもらうために活躍中です。

(構成/本誌・堀井正明)

週刊朝日  2020年3月13日号

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平井伯昌

平井伯昌

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

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