ミッツ・マングローブ「男のリアルとマッキーと」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ミッツ・マングローブ「男のリアルとマッキーと」

連載「アイドルを性せ!」

ミッツ・マングローブ週刊朝日#ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

マッキーの歌はお守りのような存在だったという (c)朝日新聞社

マッキーの歌はお守りのような存在だったという (c)朝日新聞社

『もう恋なんてしない』が流行っていた当時(92年)、私の母は「紅茶をしまった場所が分からないとかゴミ捨てがどうとか、よくそんなこと歌にするわね」と言っていました。確かに初期のマッキー曲には、「企業戦士」的なイメージとは対極の、「男だって日々の細かい現実に追われて生きているんだ」といった独身サラリーマンの日常を描写したものがたくさんあります。描かれる情景や使われるアイテムも「占い」「長電話」「ズル休み」「失恋したら髪を切る」など、かなりOL的です。男女雇用機会均等法以降、平成を「男女のリアリティの格差が縮まった時代」とするならば、マッキーの歌詞はその象徴と言えるでしょう。他にもドリカムやSMAPや広瀬香美など、このような「ボカシなし」のリアリティ追求主義は、90年代J-POPにおける一大トレンドでもありました。

 そして2000年代。「もう虚勢なんて張らない」男性像を歌い続けてきたマッキーとSMAPがタッグを組み、新時代的人生訓を歌ったのが『世界に一つだけの花』です。私はマッキーもSMAPも大好きですが、この曲だけはどうしても苦手です。「オンリーワンなんだからナンバーワンにならなくてもいい」というのは私にとって究極の「慰め」であり、そんな恩情に甘えられるほど私は健気に生きていません。男子として、そしてゲイとしてのリアルを避けてきた上に、ずっと厄介でしかなかった「個性」なんてものを都合良く逆手に取って騙し騙し生きてきた人間が、どの面下げて「私はもともと特別なオンリーワンです」などと開き直ったことを言えましょう? これはちゃんとリアルな日常と向き合って生きている人たちだからこそ抱ける境地。私なんかが辿り着くのは死ぬまでダメ。ゼッタイ。

週刊朝日  2020年3月6日号


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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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