感染者が通っていた校舎の消毒作業の準備をする専門業者ら (c)朝日新聞社
感染者が通っていた校舎の消毒作業の準備をする専門業者ら (c)朝日新聞社
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合に出席した安倍晋三首相(右から2人目) (c)朝日新聞社
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合に出席した安倍晋三首相(右から2人目) (c)朝日新聞社
東京大学の2次試験では、ほとんどの受験生がマスク姿だった。全国の学校では、今後の入試を予定通り実施するかが課題となる=2月26日、撮影・多田敏男
東京大学の2次試験では、ほとんどの受験生がマスク姿だった。全国の学校では、今後の入試を予定通り実施するかが課題となる=2月26日、撮影・多田敏男

 新型コロナウイルスを巡る影響が拡大している。政府は全国すべての学校について臨時休校させる方針を2月27日に示した。コンサートや展示会などのイベントも続々中止になっている。景気の先行きも不透明感が増しており株価も急落。「コロナショック」の襲来に、政府はどこまで対応できるのか。

 新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、本部長の安倍晋三首相は、3月2日から全国すべての小学校や中学校、高校などについて臨時休校するよう要請する考えを示した。春休みを前倒しして学校を長期間閉鎖し、感染拡大を防ぎたい考えだ。

「健康・安全を第一に考え、多くの子どもたちや教員が日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、全国全ての小学校、中学校、特別支援学校について3月2日から春休みまで臨時休業するよう要請します」(安倍首相)

 政府の対応が遅れ気味だとの声もあるなか、安倍首相としては指導力をアピールする狙いもある。

 感染者が増えている北海道では政府からの要請を待たずに、道内の全公立小中学校を27日から3月4日まで臨時休校する方針を決めていた。

 安倍首相は2月26日に、多数の観客が集まるイベントを今後2週間自粛するよう求めていた。加藤勝信厚生労働相も20日の会見で、屋内で参加者同士の距離が近いような催しは中止や延期を検討するよう促していた。

 政府の要請を受けてコンサートやイベント、卒業式や入学式などを中止する動きが広がった。プロ野球が残りの全てのオープン戦を無観客試合にするなど、スポーツの分野でも見直しが進む。東京国立博物館なども臨時休館している。

 だが自粛の要請を巡っては、判断基準がはっきりしていない問題が指摘されている。政府が判断を各自治体や民間の主催者に任せたことで、現場では困惑する声も出ていた。イベントを中止した大手企業の担当者はこう嘆く。

「開いていいのかどうか判断しようにも、基準や情報がありません。もし感染者がいたら、参加者に迷惑をかけるし、会社も批判されるので結局は自粛するしかない。政府が明確な基準を出さないと、自粛の動きがどんどん広がり続けます」

 今回の学校閉鎖も混乱を招く恐れがある。共働きの家庭などでは、子どもの面倒をみるために休まざるを得ない人も出てくる。政府は在宅勤務などを促すが、実際に休めるのは一部の人だけだ。有給休暇を急に申請しても、企業側が認めてくれるとは限らない。

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経済への影響は深刻化し、株価も下落