政府が「男系派」の主張を受け入れているだけのことで、国民がそう考えているのかはわからない。

──昨年春ごろの報道各社の世論調査で、女性天皇への「容認」や「理解する」といった回答が8割弱ありました。

園部:小泉内閣の有識者会議から15年余り経って、国民の多くが、「女性天皇で何が悪い」と思うようになったわけです。女性や男性という性で物事を判断するのは時代にそぐわないのだと、新しい教育を受けた国民の意識が変わってきたということです。

御厨:時代は変わってきている。僕が有識者会議でヒアリングをした際には、男系男子を主張する方に「世論は女性天皇を容認しています」と説明しても、「マスコミが世論を誘導しているからだ」と聞く耳を持ってもらえなかった。

■典範改正タブー 安倍政権の影響

園部:次の皇室制度をめぐる議論は、もう若い世代でつくっていかないと。いつまでも我々が、くちばしを突っ込んでいては何も進まない。そうなると、「女性宮家」や「女性・女系天皇」を視野に入れた議論は、いつごろ実現しそうでしょうか。

御厨:安倍政権の次の政権でも難しいでしょう。安倍政権が始まった8年前は、安倍さんの男系男子を主張する保守的な考えのほうが、自民党のなかで浮いていた。しかし、これだけ選挙で圧倒的な強さを見せつけられると、自民党の議員も「それが一番国民にウケているからいいんじゃないの」といつのまにか変化していったわけです。

 次の政権が、急に「女性・女系天皇」を含めた議論を始めれば、「次の政権は反安倍で行くんですか」と言われる。それは、つらいから、しばらく手をつけるのはやめようね、となるでしょう。はっきりしているのは、安倍さんが長期政権になったことで、「典範改正はタブー」という自民党全体の雰囲気を許すところまできてしまったという現実です。

園部:となると次の潮目はどこにくるのか。

御厨:政権交代がないとだめでしょう。いまの野党は、女性・女系論者が多い。自民党は家長制に根差した家族像を基本としていたが、野党がイメージするのは夫婦単位の家族像。家に関わらず、男女が同等となれば、天皇も男女同権でいいわけです。

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