園部:有識者の方々は、政府のもとで使命感を持って尽くしたのにね。

御厨:あのとき以来、言われているのは、座長などを引き受けると大変だということ。園部さんのときはどうでしたか? 僕のときは、自宅の庭に監視カメラが設置され、自宅前にポリスボックスができて警官が立ちました。有識者を引き受けるのは相当な決意が要ります。

 それでも僕のときは、「退位するか否か」という議論であったけれど、「女性宮家」と「女性・女系」に手を突っ込むとなると、こんどの有識者は、死にものぐるいで取り組まないといけない。

園部:ちょっとした準備を始めたとたん、反対派が察知して、「そこから潰せ」となる。なにも自分が標的になる義理もないですから、有識者は集まらなくなる。深刻な事態ですよ。

御厨:一方で、40年後まで手を打たずに放置すれば、別の問題が出てきます。現在の皇室典範に沿って男系の皇統を維持するためには、(1)悠仁さま結婚して、(2)ご夫妻の間に男子のお子さまが何人も生まれる、という絶対的な条件が前提になる。

 さらに悠仁さまに男子が生まれなければ、「悠仁さま」か「愛子さま」かという、「天智・天武の争い(*)」が再び起こる可能性すらある。

*壬申の乱(672年) 天智天皇の死後に起こった皇位継承をめぐる内乱。天智天皇の息子の大友皇子に対し、皇弟である大海人皇子(後の天武天皇)が兵を挙げ勝利した。(1)

>>【後編/天皇「男系派」の根拠はあいまい? 皇位継承問題は今後どうなる】へ続く

(構成/本誌・永井貴子)

週刊朝日  2020年3月6日号より抜粋