御厨:「旦那さんは誰?」という警戒は、「女性宮家」でも「女性天皇」でも起こります。「男系派」の考えの人たちは、男性が新たに皇室に入ることを非常に嫌いますからね。

園部:眞子さまの交際問題では、みんながワアワア騒ぐようなトラブルが男性側に出てしまった。結果として、「女性宮家をつくるというのは、こういうことになるのか?」という見本になってしまった。

御厨:ええ、金銭トラブルをはじめ、週刊誌やワイドショーに毎日のように見出しが載るのはよろしくない。ご本人が耐えに耐えていただけるスキャンダルならばまだいい。今度の場合は現実問題につながる。「女性宮家」や「女性天皇」をどうするかというアクションにつながるスキャンダル報道は、皇室に影が差しかねない。

園部:一番まずいのは、国民の皇室への尊敬と敬愛の念を失ってしまうということです。皇族の人数を保つ策として「女性宮家」をつくろうと言っていたのに、「どうぞ、早くご結婚なさって」という声につながりかねない。

 ならば、15年前の小泉内閣のときから始まり、野田内閣でも、頭を寄せ合って時間をかけて我々が議論したのは何だったのか、という思いもあります。

御厨:この流れになると、「旧皇族の復帰」という声も出てきます。適齢期の男性がいるならば、「女性天皇」や「女性宮家」のお相手に、という話です。このあたりは、園部さんが詳しいです。

園部:昔は、「何々の宮さま」と写真も出た。今は完全な民間人として暮らす方たちが皇室に戻るとなると、ご本人たちがそんな生活を望むのかという問題もある。

 加えて言えば、ひとりでも復帰の前例ができれば、「血がつながっている」ことを論拠にして、どの範囲まで手が挙がるかわからない。

御厨:もうひとつ、いま議論が進まない背景には、アクションを起こせば、強い抵抗を受けるという現状があります。

 小泉内閣のときの座長の自宅には、ずいぶん街宣車が押しかけて「国賊」とやられて大変だったと聞きました。

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