両親に監禁されたとされる、当時33歳の女性が凍死した自宅=2017年12月、大阪府寝屋川市 (c)朝日新聞社
両親に監禁されたとされる、当時33歳の女性が凍死した自宅=2017年12月、大阪府寝屋川市 (c)朝日新聞社
岩前氏の家に取り付けた内窓=本人提供
岩前氏の家に取り付けた内窓=本人提供
(週刊朝日2020年3月6日号より)
(週刊朝日2020年3月6日号より)

 夏になると熱中症で亡くなる人が相次ぐが、実は冬に凍死する人のほうが多い。しかも、屋内で亡くなる例が少なくない。今年は暖冬といっても昼と夜の寒暖差は大きく、底冷えの日もある。温度の感度が鈍くなった高齢者は低体温症による“うっかり凍死”になりかねない。対策を紹介する。

【グラフ】熱中症よりも多い 凍死者数はこちら

*  *  *

 まずは、厚生労働省の「人口動態調査」(2014~18年)によると、15年以外は毎年千人以上が凍死している。猛暑だった18年以外は、熱中症で亡くなった人の数より多い。年齢別では、全体の78%を65歳以上が占めている。

 場所別(その他、不明を除く)では、18年は家(庭)が540人と最も多く、全体の約42%だった。また、日本救急医学会が10年12月~11年2月に実施した、低体温症についての全国調査によると、屋内発症(303例)が屋外発症(100例)の3倍に達した。屋内の場合、約4分の3は寒冷環境で発症したという。

 東京都監察医務院の担当者は「一般論」と前置きした上で、こう話す。

「屋内で凍死する原因は、暖房を使用するなどの温度管理ができていないから。基礎的な体力が低下している高齢者に多く、健康的な人では起きない」

「芝大門いまづクリニック」(東京都港区)の今津嘉宏院長も、屋内にいても寒さによる低体温症で多臓器不全が起きて凍死する可能性があると指摘する。

「低体温症は、体の中心部の深部体温が35度以下の状態です。普段、体温計を脇に挟んで測るのは皮膚温。深部体温のほうが1度高く、普通は約37度に保たれています。寒さで体熱が奪われ、低体温症になると臓器が機能不全状態に陥り、死亡率が上がります」

 低体温症にはどんな兆候が見られるのだろうか。

「まずは、手足の末端が収縮して冷たくなり、体が震えてきます。動作が鈍り、体内の機能も低下するので、便秘も体が冷えているサインです」

 このような自覚症状が表れたら、体の内部から温める行動をとりたい。簡単にできる対処法として、今津氏は、ゆっくりと鼻から吸う深呼吸を3回してほしいと言う。吐くときは口からでも構わない。体が温まるまで繰り返したい。

次のページ