大型クルーズ船での集団感染も問題となった。横浜港に停泊しているダイヤモンド・プリンセス号には約3700人が乗船していた。19日までに延べ3011人が検査を受け、そのうち621人の感染が確認されている。約5人に1人という高い割合で、感染を抑えるために船内で隔離したはずなのに、かえって被害を拡大した疑いがある。下船前の検査に漏れがあったことや、下船後のチェック体制の不備も指摘された。

 乗客のうち4人の死亡が、2月25日までに確認されている。船内業務にあたった厚労省職員やスタッフらの感染も次々に判明。政府は感染防止策は適切だったと主張しているが、早期に下船させて充実した施設で隔離できなかったのかなど、疑問は深まる。

 クルーズ船は英国船籍で、米国やカナダなどの乗客も多く、帰国後に感染がわかるケースもあった。日本政府の対応は失敗したのではないかとの疑念が、国際的に強まる。

 不信感を招く閣僚の行動も発覚している。小泉進次郎環境相と森雅子法相、萩生田光一文部科学相が、新型コロナウイルス感染症対策本部の2月16日の会合を欠席。地元での新年会など私的会合を優先していた。3閣僚とも国会で反省は表明したが、明確な謝罪はなかった。失敗を素直に認めない姿勢で、本当に感染拡大が防げるのか。対策本部長でもある安倍晋三首相の対応が問われている。

 今後の焦点は、夏の東京五輪・パラリンピックへの影響だ。すでに多くのスポーツ大会やイベントで、中止や延期、規模縮小が広がっている。

 加藤厚労相は今後の展開によっては、開催に影響が出る可能性を否定していない。今回の流行が夏まで続けば、開催の延期や縮小、無観客試合などに追い込まれる可能性が高まる。

 最終的に判断するのは日本政府ではなく、国際オリンピック委員会(IOC)や国際パラリンピック委員会(IPC)だ。五輪開催で支持率を上げたい安倍政権としては“強行突破”したいのかもしれないが、決定権は日本にはない。
(本誌・多田敏男、池田正史)
※週刊朝日オンライン限定記事