そもそも、国内で初の感染者が確認されたのは1カ月以上前。政府は、国内での感染拡大の恐れは少ないとして、移動制限などの抜本的な封じ込め策をとってこなかった。国内の感染者は2月24日正午現在で144人にまで増えている。政府の対応を巡っては、後手に回ったとの指摘が相次いでいる。

 マスクの確保もできていない。ドラッグストアなどでは売り切れが続き、個人が買おうと思ってもできない状況だ。ネットなどでは便乗値上げも目立つ。

 政府はメーカーがフル生産することで、品不足は2月17日以降は解消に向かうと説明していた。だが、世界的な需要の高まりから輸入は難しく、国内の生産だけで確保できるめどは立っていない。せきなどの症状がある人はマスクをするように政府は呼びかけているが、そのマスクが手に入らないのだ。

 政府が早期に徹底した対策をとれなかったのは、中国への配慮と東京五輪・パラリンピックへの影響を避けたかった思惑があると指摘されている。政府が中国からの入国制限を拡大したのは2月13日になってからだ。

 感染の有無の検査を受けられるのは当初、中国の流行地への渡航歴がある人らに限定していた。発熱などの症状があっても検査を断られた人もいて、感染者の発見が遅れた。今では渡航歴がなくても医師の判断で受けられることになっているが、実際は保健所で対象外とされるケースも相次いでいる。霞が関のある官僚はこう分析する。

「中国の習近平国家主席の訪日を4月にも控え、全面的な来日拒否はしにくかった。感染の検査については積極的にしていない国も多い。日本だけが早くからやると、国内の感染者数が世界の中で突出し、五輪の開催が危ぶまれる。政府としては、水際対策で乗り切れると思っていたんです」

 希望的観測は状況を悪化させた。水際対策は失敗し、国内での感染封じ込めはすでに難しくなっている。政府の専門家会議は2月24日の見解で、「一人ひとりの感染を完全に防止することは不可能」と認めた。米国が日本への渡航警戒レベルを、「注意を強化」に引き上げるなど、世界的にも日本への警戒感が強まっている。

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東京五輪への影響も不可避か