当時21歳の大学生。人生をかけたレースだった。

「(勝因は)全体を通しての金メダルに対する『執念』ですかね。(初めて出場した)前回ロサンゼルス五輪から4年間、けがしたり、水泳をやめようかなと思ったり、いろいろ波がありました。だけど、『これだけ頑張るのは一生に一度だから』と、頑張ってきました」

 現役引退後は米国の大学で指導経験を積み、2007年に医学博士の学位を取得。15年にはスポーツ庁長官に就任した。

「目標を立てて日々努力し、目標に到達したというのは、ほかの分野においても『そういうことが可能なんだな』と思わせてくれる。(ソウルの金メダルで)非常に自信を得たというか、その大切さを経験できたなと思っています」

 56年ぶりに東京で開催される五輪について、選手たちにこう期待を寄せる。

「ものすごく注目を浴びますからね。それに早く慣れて、その場の雰囲気を自分の力に変えられれば、爆発的な力を出せるチャンスかもしれません」

 観客にも期待している。

「大勢の観客が拍手や声援を送って選手を応援する。選手はそのエネルギーをいただいて自分の蓄えていたものを発揮し、観客に感動や興奮を届ける。そういう意味で、観客の皆さんは、大いにオリンピックに“参加”してください」

(本誌・緒方麦)

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週刊朝日  2020年2月28日号