──成功によって人生を破壊されてしまったという点で、例えばマリリン・モンローなどにも共通することだと思いますか?

「確かにこういった例はいくつもあると思うわ」

──あなた自身、「ザ・エージェント」(1996年)、「シカゴ」(2002年)などで、世界的なスターの仲間入りをした後、2010年から6年ほど現役から身を引きました。

「そう。私は一時演技をやめたの。私の人生も同様に成功に大きく影響された。でもそれが見えなかったの。家族にも友達にも見えていたはず。今、振り返れば私の目にもそれが見える。距離を置くことで、それが見えてくる。カオスの中にいれば、状況は何もわからない。でも、外側から見れば、俯瞰して見えるわ。嵐にしても、何マイルか距離を置いたところから見れば違って見える」

──あなたは16年「砂上の法廷」でカムバックを果たしました。それまでどんな感じだったのでしょうか?

「私生活の中に真実味があまりなくなったという感じになった。人間関係も表面的になってしまった。人生の重要な決定も、仕事を中心に決めていた。正しい判断を下してはいなかったと思う。今になってそれがわかったけれど。最近は仕事だけを優先するのではなく、自分の人生を優先できるようになったと思う」

──35歳以上のエンターテインメントに携わる女性に対する過酷な扱いについて本作は触れています。

「ガーランドの時代より出演できる作品、機会は増えたと思う。35歳以上の女優の需要はこれまでもずっとあったはずよ。でも、制作側がこれまでの需要に向けて映画を作らず、可能性を開拓しなかっただけ。作ればそれを見に来てくれる人は必ずいたはずよ。作っていれば、必然的に状況は変わっていたはず」

──現役女優として状況はどのように改善したと感じますか?

「私たち女性が見たいと思う映画が制作されれば、女性の声が届き、商業的な考え方にも変化が起こる。これまで力を持っていた人も態度を変えざるを得なくなる。私たちが女性としての経験を反映させ、過去において歴史的に男性が定義づけた女性の価値を、女性の定義づける女性の価値に置き換えていけばいいと思うの。女性の声と資金によって状況は変わりつつあると思うわ」

(取材・文/高野裕子)

週刊朝日  2020年2月28日号